パタハラとは?

パタハラ被害者は10人に1人!自分と家族を守るための対策

パタハラとは、育児休暇の取得など、男性社員が子育てに関する権利を行使した際に、職場の上司や同僚などが行う嫌がらせや妨害行為を指します。パタハラは男性の10人に1人が被害経験があるというデータもあります。パタハラの事例や言動を把握し、パタハラに負けないための対策を知っておきましょう!

パタハラ被害者は10人に1人!自分と家族を守るための対策

パタハラとは?イクメンなるための険しき道

「育児休暇を取って出産後のママを助けてあげたい」と考えているパパたちを待っているのは、会社でのパタハラ!?

現代では、パタハラ被害を受けているパパが非常に多いのです。しかし、パタハラという意識が浸透していないこともあり、自身が被害を受けていても、それがパタハラだと気づいていないパパもいます。

パタハラに負けたくないパパたちに、パタハラとはなにか、パタハラの事例、上司や同僚はなぜパタハラをするのか解説。パタハラから自分や家族を守るための対策を練りましょう!

「パタハラ」とは、パタニティー・ハラスメントの略

パタハラとは、パタニティー・ハラスメントの略です。「パタニティ―」とは、日本語に訳すると「父性」を意味します。

パタハラとは、男性社員が育児休暇を取得するなど、子育ての権利や機会に対して、職場の上司や同僚などが差別的発言や嫌がらせ、妨害を行うことを指します。

性的嫌がらせを意味するセクハラ、職場内の優位な立場を利用し相手に精神的・肉体的に苦痛を与えるパワハラ、そして近年ようやく浸透してきた働く女性の妊娠・育児に対する嫌がらせを意味するマタハラ。
これらの3大ハラスメントに匹敵する、働くパパへの深刻なハラスメントがパタハラなのです!

「イクメン」の言葉の陰で、パタハラは日常的に行われている

イクメンの陰でパタハラされる現実

近年「イクメン」という言葉が多く聞かれるようになりました。熱心に育児をするパパたちを指す言葉です。芸能人ではイクメンの方も増えていて、ママのサポートを行っている姿がとても好意的に受け止められています。

しかし、イクメンという言葉の陰で、日本の会社ではいまだにパタハラが行われています。
日本労働組合総連合会の調査によると、10人に1人が「職場でパタハラをされた経験がある」と回答しています。

パタハラを受けたパパ達の多くは、育児休業などの子育てのための制度の利用を認めてもらえなかったり、周囲の風当りの強さから利用を諦めてしまっています。
仕事と子育てを両立したいパパにとっては、なんとも切ない話です。

パタハラの事例~こんな言動はパタハラに該当します!

上司や同僚のどんな発言や行動がパタハラに該当するのに、被害を受けている本人は苦痛を感じていても、それが「パタハラ」にあたるとは意外と気づかないこともあります。

以下でパタハラとなる言動をご紹介します。
同じこと、似たようなことを言われた経験はありませんか?

上司のパタハラ言動

パタハラ言動の上司

パタハラ加害者となるのは、多くの場合が上司です。特に上司が年配で、「男は仕事、女は家庭」といった古い価値観の持ち主だと、問題はより深刻になります。

育休取るぐらいなら辞めろ

育児休業は労働者の権利であり、取得を咎められる理由はありません。「育児休暇を取るなら辞めろ」という言動は当然パタハラ・パワハラに該当します。

このような言動をすることで育児休暇が取りにくくなり、結局取らなかったパパもいらっしゃいます。これから家庭を支えていかなければいけない部下に対して劣悪な言動です。

育休から復帰した時はお前の仕事はないかもよ

育児休暇を取って子育てに奮闘しようとするパパに対して、復帰後の仕事がないかもしれないという言動はパタハラに該当します。パパは育児休暇を取ることだけでも会社に迷惑をかけると不安でいるのに、さらに不安にさせます。

仮にその言動が一見和やかな雰囲気から発せられたとしても、これから育児休暇を取る部下に対して言い放つ言葉では決してありません。

保育園の送り迎えなんて女房に行ってもらえよ

「男は仕事だけしていればいい」と考えている上司はまだまだ多くいます。日本では共働きの夫婦が60%近くなってきているにも関わらず、男は家事や育児をするものではないと考えているのです。

定時退社すること、そしてその理由が保育園の送迎であることに、上司が口を出す権利はないはずです。

同僚のパタハラ言動

職場で同僚の不満を聞かされる男性

パタハラは上司の言動だけではなく、同僚の言動にも実は多くあります。同僚のためを思っての発言だとしてもパタハラに該当する可能性があるので、みなさんも気をつけてください。

育児休暇を取ったら出世に響くよ

育児休暇を取ると出世しづらくなることを同僚に伝えた場合、パタハラに該当することがあります。確かに現実問題として、会社の出世コースから外れてしまう可能性はないとは言えません。しかし、同僚にこのような発言をされては、育休を非常に取りづらくなります。

育児休暇はあきらめた方がいいよ

上司の顔色を伺っての同僚の言動もパタハラに該当します。育児休暇の話をすると上司がいい顔しないこともありますが、同僚が妨げる言動はするべきではありません。こうした周囲の圧力が更に育児休暇が取りにくい状況を作ってしまっているのです。

上司より先に帰るのはマズイだろ!

保育園のお迎えなどのために返ろうとしている同僚を引きとめる発言はパタハラに該当します。就業時間を終えているのなら、同僚に引きとめられる理由はないはずです。

会社全体で行われるパタハラ事例

また上司や同僚の言動だけがパタハラに該当するわけではありません。
以下のように、正当な理由なく、不当な扱い受けた場合も、それはパタハラに該当します。

  • 育休取得を理由に、重要なプロジェクトや役職から外された
  • 「子の看護休暇」などの制度の利用を認めない
  • 男性が育児をすることに対して、批判的・差別的な言動を浴びせられる

なぜパタハラは行われるのか?

最近でこそ、ニュースなどでも話題に上がるようになりましたが、「パタハラ」の存在はやっと認識されはじめた状態に過ぎません。
なぜ、日本の会社ではパタハラが行われてしまうのでしょうか?

「男は仕事、女は家庭」という価値観

パタハラがなくならない理由は、やはり人の意識によるものでしょう。制度が整っても、人間が価値観を変えるには時間がかかります。

サラリーマン・専業主婦が効率的だった時代

団地を背景に財布を持って笑顔の専業主婦

かつては、夫はサラリーマンをして家族を養う給料を稼ぎ、妻は専業主婦として家事・育児に専念するのが1番良いと考えられていた時代があります。具体的にいうと、1954年~1973年の高度経済成長期です。

実は「サラリーマン」という職業、「専業主婦」という存在が一般的となったのは、戦後からに過ぎません。それまでは、日本人は男女ともに農業や自営業で男女ともに働く人が大半でした。それが戦後、産業が急激に発展したことで、自分の労働力を企業に提供することで給料を得るサラリーマンが飛躍的に増えたのです。

経済が伸びていた時代は、「サラリーマンと専業主婦」という家庭運営にはメリットもありました。働けば働くだけお金が稼げましたし、女性も夫を支えていれば安定した生活は保障されていたのです。

「男は仕事、女は家庭」という価値観は、歴史そのものは浅いのですが、その恩恵を受けた世代は、経済的な豊さを実感していました。そのため、価値観の転換には難しい部分があるのでしょう。

男子の家庭科の授業が必修化されたのは1994年

家庭科の授業

現在は中学・高校でも家庭科は男子も必修授業となっています。しかし、男子の中学での家庭科が必修となったのが1993年、高校での家庭科が必修となったのが1994年と、まだ必修になってから20年ほどしか経っていません。教育現場ですら、「家事は女性の仕事」と考えていた時代があったのです。

ちなみに、必修化を体験していない世代とは、現代の40代以上にあたり、ちょうど会社で中堅以上の役職についている方も多い世代です。

企業の人材不足

パタハラが減らない理由の一つとして、日本企業の深刻な「人手不足」が挙げられます。

社員が育児休暇で長期間仕事をしないと、交代要員の補充をしないと仕事が回らなくなります。しかし、現代の経済状況では、その交代要員を立てることが人件費の問題などでできない企業が少なくありません。結局、育休を取得した社員のいない間、周りの社員の仕事量が増えてしまう職場もあります。

育休は法律で認められた権利ですし、人材の配置は本来企業側が配慮するべきことです。しかし、企業にも余裕がなく、現場にしわ寄せがいくと、働いている人たちの間では不公平な感情が沸きおこります。

その結果、そうした不満が育休社員へのパタハラに繋がってしまうのです。

パタハラ被害から自分を守るための対策

パタハラを受けないために、または受けてしまったパパたちは、自分や愛する家族を守るためにどんな対策を行えばいいのでしょうか。

育休を取りたいという考え方を事前に知らせておく

育休予定者を予定に入れる人事担当

急に育児休暇を取りたいと言っても上司や同僚は困ってしまいます。育児休暇を取ることをママと事前にしっかり話し合って、早い段階で上司や同僚には相談しておきましょう。

事前に育児休暇を取りたいことを伝えていれば、その休暇までに片付けておきたい仕事などスケジュール調整ができます。

人事部を味方にする

上司や同僚だけが会社の社員ではありません。人事部がある会社に勤めている方は人事部を味方にすると円滑に育児休暇が取れるようになります。人事部が味方と知った場合、上司は納得せざるをえません。

同じようなパタハラ被害を受けた人と意見交換

以前パタハラ被害を受けたことがある人と意見交換をすることも、解決策が見つかる可能性があります。また、問題を1人で抱え込むよりも、精神的に楽になれるはずです。

会社を辞めて新しい会社を探す

特定の上司ではなく、社内で公然とパタハラが行なわれている企業に未来があるとは考えにくく、この先ずっと同じ会社にいるよりは、キリがいいところで会社を辞めて転職することも検討しましょう。

パタハラが当然のように行われている会社がある一方で、以下のような企業もあるのです。

パタハラ対策として1週間程度の育休を義務付ける企業

ある会社ではパタハラ対策として1週間程度の育児休暇を取ることを義務付けています。国だけではなく、企業側もパタハラは問題視し始めているので、育休の利用を義務付けることで社員の意識変革を促す目的があります。

イクボスの育成に励む企業

ある会社ではイクボスの育成に励むところもあります。イクボスというのは、育児に対して理解がある上司のことを指し、部下に育児休暇取得を促したり、仕事と育児の両立できる環境作りを行う役目を持っています。

育児休暇が取りにくいという考えを変えるために、まずは上司の考え方を変えようという対策です。

フリーランスに転向する

育児休暇がうまく取れなくて困る、会社の組織に執着していないという方はフリーランスに転向することも視野に入れてみましょう。

うまくいけば、家族との時間も多く取れますし、現在もらっている給料よりもいい収入が得られる可能性もあります。

過去には裁判で勝訴したケースも!

パタハラを受けたことをどうしても許せないという方は裁判を起こすという選択肢もあります。もちろんお金や労力はかかりますので、万人におすすめする方法ではありませんが、過去には裁判で勝訴したケースもあります。十分な証拠さえあれば、パタハラ被害は十分に戦える事案になってきています。

2017年1月から育児介護休業法&男女雇用機会均等法が改正

2017年1月から育児介護休業法と男女雇用機会均等法が改正しました。この改正によってマタハラやパラハラ被害の減少にもつながる傾向になると考えられています。どのように改正されたのか確認しましょう。

マタハラ・パタハラの防止措置が新設された

育児介護休業法が改正

2017年1月1日から育児介護休業法&男女雇用機会均等法が改正されました。育児休業等の対象となる子の範囲の改正、そしてマタハラ・パタハラの防止措置が新設されました。

今回の改正では、厚生労働省の指針によって、事業主がマタハラ・パタハラなどの防止措置を行うことを義務付けられています。

要するに、国がはっきりと、「企業は、社内でマタハラ・パタハラが行われないように対策をしてください」と言っているのです。

マタハラ・パタハラ防止対策の内容を確認しよう

企業が行うマタハラ・パタハラ防止対策とは具体的にどのようなものがあるのか、確認してみましょう。

  • 事業主のハラスメント対策の方針の明確化、労働者への周知・啓発
  • ハラスメント相談窓口を設ける
  • ハラスメントの相談後の適切な対応
  • 制度の利用について周知させる
  • 休業を取る労働者への啓発運動

就業規則の条項例

一例として、マタハラ・パタハラの防止対策を取り入れた会社の就業規則の条項例を確認してみましょう。

  • 該当する従業員には情状に応じて戒告、減給または出勤停止させる。
  • 該当する従業員は懲戒解雇とする。服務態度などの情状によっては普通解雇、減給または出勤停止にする。

マタハラ・パタハラをした側は最悪の場合、懲戒解雇にまで処分が下るようになりました。これによってマタハラ・パタハラの被害が減少できると考えられています。

パタハラに負けない時代になってきた

残念ながら、パタハラは存在します。しかし、パタハラという問題が顕在化されたことで、育児をしたい男性の味方は飛躍的に増えています。「パタハラ」という言葉を聞かなくなる日がいつか訪れるはずです。

ママのために、子供のために、育児休暇を取りたいと考えているのであれば、ぜひ育児休暇を取ってあげてください。国が勧めている男性の育児、パパたちが惨めな思いをする理由はありません。

日本の男性の育児取得率は、3%前後。しかし、これからパパになる若い世代のためにも、その育休は大きな意味を持つはずです。