新生児の呼吸の見分け方

新生児の呼吸は浅くて速い!正常な呼吸数を知っておこう

新生児の呼吸は、大人と比べるとテンポが速いのが普通ですが、あまりにも荒い時は異常を疑い、病院へ連れていく必要があります。新生児の呼吸の数え方と正常な呼吸数、異常があるときの音やその他の症状を解説。呼吸が浅い、不規則になるタイミング、呼吸に異常が見られる赤ちゃんの病気を紹介します。

新生児の呼吸は浅くて速い!正常な呼吸数を知っておこう

新生児の呼吸は浅くて速いのが普通?

新生児の赤ちゃんをじっくりと観察してみると、呼吸が荒かったり、不規則だったりする様子が時折見られます。大人の呼吸と比べるとあまりにも速いので、「もしかして病気!?」と不安になることもあるでしょう。

しかしながら、赤ちゃんは元々大人や子どもよりも呼吸が速いものなのです。しかも、ちょっとしたことで、呼吸がさらに速くなったり、不規則になることも珍しくありません。

赤ちゃんの呼吸が不規則になるタイミング

赤ちゃんは次のようなときに、呼吸が荒くなったり不規則になったりすることがあります。

泣いた後

泣いた後の赤ちゃんをなだめる母親

赤ちゃんは全身を使って泣きますので、泣いた後は呼吸が荒く、あまりに激しく泣いたときは呼吸が不規則になってしまいます。泣きすぎて喉が痙攣し、何回か浅い呼吸を繰り返したりすることも珍しくありません。
新生児ではあまり見られませんが、生後6ヶ月~2歳頃にかけては、激しく泣いたせいで無呼吸となってしまい、「泣き入りひきつけ」と呼ばれる痙攣が起こることもあります。

授乳後

ミルクやおっぱいを飲んでいる間は、赤ちゃんは鼻で呼吸をしています。大人と比べると赤ちゃんの鼻腔は非常に狭いので、充分な酸素を取り入れることが難しくなってしまいます。そのため、授乳後は呼吸が荒くなり、深く酸素を取り入れようとするのです。

就寝時

就寝時は呼吸の回数が減り、耳を近づけないと分からないくらいに呼吸が浅くなることもあります。赤ちゃんは腹式呼吸をしていますので、お腹が上下に動いているかで呼吸の深さをチェックして下さい。

呼吸が気になるときは数えてみよう

新生児は呼吸が大人に比べて速いのが普通ですが、だからといってどんな呼吸も正常の範囲内とは断言できません。「正常の範囲内の呼吸の速さ」と「病気などの異常事態の呼吸の速さ」を見極める方法について探っていきましょう。

新生児の正常な呼吸数

笑顔の赤ちゃん

以下の表では、年齢による1分当たりの正常な呼吸の回数を示しています。この表からも、新生児の赤ちゃんの呼吸が速くても、ほとんどの場合で正常の範囲内と言えることが分かります(注1)。

1分間に60回以上呼吸をしているときは、熱や赤ちゃんの機嫌もチェックして、念のため病院に連れて行くようにしてください。

呼吸数(回/分) 60回未満 50回未満 40回未満 30回未満
時期 新生児期 乳児期 幼児期 学童期

呼吸の数え方

弱い呼吸などもありますので、呼吸自体を正確に計測するのは少し難しいのですが、赤ちゃんのお腹に手を当てて、秒が分かる時計などで時間を測ると誤差が少なくなります。1分間に何回呼吸をしているかを確認しましょう。

ただし、泣いた後や授乳後は自然と呼吸が速くなります。赤ちゃんがある程度落ち着いてから、呼吸の回数を数えるようにしてください。

呼吸が荒いときに病院へ行く目安

呼吸が速くて当然とは言っても、やはり新生児がハアハアと荒い呼吸をしていると不安な気持ちになってしまいます。赤ちゃんの呼吸の様子から、どのように病院に連れて行くかどうかを判断すべきか見て行きましょう。

呼吸の速さ

赤ちゃんの様子を見守る母親

赤ちゃんのお腹に手を当てて、1分間の呼吸の回数をチェックしてみましょう。お腹と胸の中間に手を当てみて、呼吸の回数が60回以上あり、しかも赤ちゃんの機嫌が良くないときは、病院に連れて行きましょう。

ただし、授乳後や泣いた後など、一時的に呼吸が速まっているだけのこともあります。呼吸が速いのかどうかをチェックするときは、かならず赤ちゃんが落ち着いていることを確認してから数えるようにしてください。

ゼーゼーという音

赤ちゃんの呼吸に合わせてゼーゼーという音が聞こえているときは、肺炎などの呼吸器疾患に罹患している可能性が考えられます。場合によってはヒューヒューと漏れるような音が聞こえることもあります。この音も肺炎に特徴的な音ですので、聞こえたときは赤ちゃんの機嫌が悪くなっていないか、苦しそうにしていないかを確認し、病院に連れて行きましょう。

発熱

呼吸が荒いだけでなく熱も高くなっているときは、風邪や肺炎などの疾患にかかっていると考えられます。

新生児を含め、生後3カ月未満の赤ちゃんの場合、しんどそうにしていなくても、熱が38℃を超えるときにはすぐに病院に連れて行くようにしましょう。苦しそうにしているときは、首の後ろや脚の付け根、わきの下などに水で絞ったタオルなどを当ててください。

呼吸が荒い・速いなどの症状があらわれる新生児の病気

泣いた後でも授乳後でもないのに新生児の赤ちゃんの呼吸が速いとき、次の病気に罹患している可能性があります。

風邪

赤ちゃんの鼻詰まりを吸引する母親

風邪で鼻水が出ると、鼻が詰まってしまい、呼吸が荒くなってしまうことがあります。赤ちゃんが熱っぽいなと思うときは体温を測ってみましょう。呼吸が荒く体温も38℃以上あるときは、風邪をひいている可能性があります。

赤ちゃんが辛そうにしているときは、早めに病院に連れて行き、解熱治療等の適切な処置を受けるようにしてください。

風邪のときは病院でどんな治療をする?

症状にもよりますが、ほとんどの場合が対処療法となります。熱が高い場合は解熱剤が処方されますし、咳がひどい場合は咳止めシロップを処方されることもあります。

よほど赤ちゃんの体調が悪い場合を除けば、風邪と診断されたときは自宅療養をするように言われることが多いですが、新生児の場合、肺炎のリスク等を考えて、念のため入院となるケースも見受けられます。

肺炎

肺炎の炎症状態

肺炎とは、喉から肺胞(肺の中にある気管支の末端部分)までにウイルス感染や細菌感染による炎症が広がっている状態を指します。肺炎に罹患すると、呼吸が荒くなったり、不規則になったり、高熱が続くこともあります。

風邪と肺炎を見分けることは難しいのですが、新生児の場合は38℃以上の高熱があるときはすぐに病院に連れていきましょう。他にも、咳き込みや痰の詰まりが見られたり、機嫌が悪い時間が長くなったりしているときは、病院に連れて行って適切な処置を受けるようにしてください。

肺炎と診断されたときは入院治療が一般的

新生児の赤ちゃんは、呼吸機能が未発達です。呼吸器が未発達な状態で肺炎に罹患してしまうと、短時間で脱水症状を起こしたり、呼吸困難に陥ったりすることもあります。肺炎と診断された時点で入院して抗生物質の投与等の治療に当たることが一般的です。

新生児呼吸窮迫症候群

新生児呼吸窮迫症候群は、妊娠週数32週未満で誕生した早産児や出生体重1,500グラム未満の低体重出生児によく見られる呼吸器疾患です。呼吸の回数が多くなったり、陥没呼吸(呼吸をするときに胸の一部が陥没する)が見られたり、うめくような声が出たり、チアノーゼが見られたりすることがあります(注2)。

低出生体重児とは?抱えるリスクとNICU退院後の成長発達
低出生体重児とは?抱えるリスクとNICU退院後の成長発達

症状がひどくなると、人工肺サーファクタントを投与したり、人工呼吸管理が必要になったりします。多くの場合は出生後、病院に入院中に治療を開始することができますが、退院後に呼吸回数の多さや陥没呼吸やうめくような声が見られるときは、早めに病院に出向いて治療を受けるようにしてください。

新生児一過性多呼吸

新生児一過性多呼吸も、早産の場合に見られることがある呼吸器疾患です。早産以外にも、帝王切開によって生まれた場合や微弱陣痛だった場合に罹患するリスクが高まります(注3)。

呼吸の回数が多くなったり、陥没呼吸やうめくような声、チアノーゼが表出したりなど、見られる症状が新生児呼吸窮迫症候群とほぼ同じです。

しかしながら、新生児一過性多呼吸の症状が長引くことはほとんどなく、酸素吸入を行うことで出生数時間後~数日後で快癒することが新生児呼吸窮迫症候群とは異なります。

周期性呼吸

20秒間に3秒以上の無呼吸が3回以上見られることを、周期性呼吸と言います。しばしば新生児に見られる症状ですので、周期性呼吸が見られたからと言って何らかの疾病だとは診断しません。早産児や低体重児だけでなく、正期産児にもしばしば見られます(注4)。

新生児は呼吸初心者!

欠伸する新生児

お腹の中では胎盤を通して運ばれる酸素で生活していた赤ちゃん。新生児の赤ちゃんが口や鼻を使った呼吸を始めたのは、生まれた瞬間からなのです。

つまり、赤ちゃんは呼吸の初心者とも言えます。今までしたことがなかった方法で息をして命をつないでいるのですから、呼吸が荒くなったり浅くなったり、ときどき数秒止めてしまったりすることは正常の範囲内です。

もちろん、赤ちゃんの呼吸に乱れがあると心配してしまうのは無理のないことです。心配なときは、1人で悩まずに、念のため病院を受診しましょう。

今は小さい赤ちゃんも、少しずつ大きくなり、呼吸が上手になっていきます。日々の観察だけは続けながら、温かく見守ってあげましょう。