大泉門の閉鎖時期・閉じない理由

大泉門は一度大きくなる?なくなる時期・閉じない理由

大泉門とは、頭の骨のない、プニプニとやわらかい部分のこと。赤ちゃんの時期にしかみられない特徴で、成長過程で一度は大きくなるため、「大きさは大丈夫?」「いつ閉鎖するの?」と心配になることも!大泉門など頭蓋骨のすきまの役割や大泉門が完全になくなる時期、閉じない原因など詳しく解説!

大泉門は一度大きくなる?なくなる時期・閉じない理由

大泉門は成長過程で一度大きくなる?なくなる時期や普段のケア

赤ちゃんの体は、とても不思議で神秘的。ママのお腹の中で約10ヶ月もの長い期間を過ごし、生きるためのさまざまな力や本能を身につけていますが、この大泉門もまさに赤ちゃんの不思議のひとつなのです。

どうして大泉門があるの?大泉門がある理由は2つ!

生まれたばかりで大泉門が開いている赤ちゃん

「頭蓋骨に穴があいている!」「やわらかくてプニプニする!」
大泉門を噂には聞いていても、初めて見るとその存在にビックリするかもしれませんね。大泉門は赤ちゃんみんなにあるもので心配はいりませんが、なぜ頭蓋骨に穴が開いているのでしょうか?
その理由は大きくふたつ。

産道を通り抜けやすくするため

分娩時に、赤ちゃんが通ってくるママの産道は、骨盤の中にあるためとても窮屈です。赤ちゃんはその狭い産道の中を、頭を下にした状態で、ゆっくりと回転しながら下っていきます。
産道の中を最初に進む頭は強い圧迫を受けるため、頭が体の中で一番大きい赤ちゃんにとってはとても大変な作業です。

そして、ここがまさに赤ちゃんの不思議のひとつ。
赤ちゃんの頭の骨は柔らかく、いくつかに分かれているのは、狭い産道を通るときにそれぞれの骨を重ね合わせて頭を変形するためです。これは「骨重積」と呼ばれていますが、出生後、数日で元の形に戻ります。

このように、産道を通り抜けやすいように臨機応変に頭の形を変えたりサイズを小さくすることは、スムーズに生まれるために必要不可欠と言えます。

脳が大きく成長するため

成人の脳の重量は約1,400gです。それに対して、新生児の脳の重量は約400gと小さなものです。しかし、生後8か月頃には約2倍に、なんと、5~6歳で成人の脳の約90%にまで大きく成長します。

これだけの短期間で急速に脳が成長するため、頭蓋骨がその成長を邪魔することなく対応できるように、骨と骨のすき間(大泉門)があるのです。

大泉門を詳しくみてみよう!

外で元気に遊ぶ男の子

大泉門は、頭の骨がない部分で、とてもやわらかい触り心地がします。よく観察してみると、心臓の鼓動に合わせてピクピクと動くのが見えます。
この大泉門は、赤ちゃんのときのわずかな期間にみられるもので、成長と共になくなっていきます。では、大泉門とはどういったものなのでしょうか?

頭の骨のすき間「大泉門」

大人は1つの固くて頑丈な頭蓋骨を持ちますが、これは成長過程で作られたもの。
赤ちゃんの頭蓋骨は、額部分にあたる前頭骨、頭頂部にあたる頭頂骨、後頭部にあたる後頭骨、耳のすぐ上にある側頭骨など、いくつかの骨が集まってできています。
生まれたとき、これらの骨はお互いに離れた状態で、骨と骨の間にはすき間が保たれていますが、成長するにつれてそれぞれの骨は接合していき、すき間はなくなっていきます。

大泉門とは、左右の前頭骨と左右の頭頂骨、計4枚の骨の角が集まった部分の穴の部分をいいます。それぞれの骨の角には丸みがあるため、ひし形のようなすき間ができています。

大泉門がある位置

赤ちゃんの額の真ん中を正中線に沿って指で触れていくと、髪の生え際を超えた少し上の位置に、プクっとしたやわらかい場所があります。この部分が大泉門です。ペコペコと脈打っている様子や少し凹んだように見えることもあります。

大泉門の大きさ

乳児健診などでは、頭囲と一緒に大泉門の大きさもチェックされます。
測る場所は、右前頭骨から左頭頂骨の長さと、左前頭骨から右頭頂骨の長さ、それぞれの対角線です。それを足して2で割ったものが、「大泉門径」として算出されます。

頭囲にも骨の大きさにも個人差があるので、もちろん大泉門の大きさも人それぞれですが、新生児の頃は1~4cmほどの大きさの場合が多いようです。

小泉門もあります

大泉門の他にも頭蓋骨の大きな隙間はあります。後頭部にある小さい三角形で「小泉門」といいます。
左右の頭頂骨と後頭骨の計3枚の骨の角によってできた穴で、大泉門より小さく目立ちません。

大泉門がなくなる時期

シカが大好きな男の子

大泉門は、成長と共に小さくなりなくなっていくものですが、いつ頃、どのように閉じていくのでしょうか?

新生児から生後9〜10ヶ月までは大きくなります

新生児の頃は1~4cm程の大泉門は、成長過程でなくなるものですが、実は赤ちゃんの時期に一旦隙間は大きくなります。
それは、赤ちゃんの頭部や脳の成長のスピードがとても早く、骨の発達が追いつかないため。時期としては新生児から生後9〜10ヶ月くらいまでその傾向が見られます。

大泉門は成長と共になくなるものという認識から、「生まれたときより大きくなっている!」「閉じる気配がないんですけど?!」と不安になる気持ちも分かりますが、心配はいりません。

2歳頃には完全に閉鎖します

大泉門は、生後9〜10ヶ月頃から小さくなり始め、1歳2〜3ヶ月頃には、触れても分からなくなります。個人差はありますが2歳頃には完全に閉鎖します。

小泉門は生後2ヶ月頃には完全に閉鎖します

小泉門は、生まれたときにもほとんど目立たず、触るとすこし凹みがある程度です。そのため、生後2ヶ月頃には完全に閉鎖します。

大泉門への強い刺激に注意!

ママのいたずらで頭にシールを貼られた男の子

大泉門も小泉門も、骨がないデリケートな部分で、骨で覆われている他の部分に比べて刺激に弱いのは間違いありません。しかし、骨がないからといって、ちょっとした刺激が直接脳にダメージを与えてしまうかというと、そこまででもありません。

大泉門だけではなく、赤ちゃんの頭蓋骨のすき間は、「縫合」と呼ばれる薄い膜状の靭帯で結合しています。
そして、脳は「脳脊髄液」という液体で保護された上に「筋膜」と呼ばれる組織で覆われているため、まったくの無防備というわけではありません。

普段の生活を送っている中では、大泉門に必要以上に触れなければOK で過度に意識する必要はないのです。

入浴など普段のケアで気を付けること

沐浴のときに、大泉門の上の頭皮に指で触ったり手でさすること自体は特に問題はありません。ただし、力を加えずにやさしく洗ってあげましょう。

お風呂上りにブラシを使うときは、大人用の固いものは使わずに、赤ちゃん用のブラシを使います。髪の量にもよりますが、赤ちゃんの髪は基本的に軽いブラッシングでOK。
特に新生児のときには何が何でもブラシをしてあげる必要はないので、大泉門の部分を避けて使うようにしましょう。

もし大泉門をぶつけてしまったら?

赤ちゃんの大泉門をぶつけて落ち込むママ

ただでさえデリケートな赤ちゃんの頭ですから、普段から注意はしていても、抱っこのときに、パパやママのあごが当たってしまったり、何かの拍子にぶつけてしまう可能性はゼロではありません。
万が一、強めにぶつかってしまったとしても、赤ちゃんが怒って泣いているようであれば大事に至っていない場合がほとんどです。

もし、脳に影響を与える問題が発生した場合には、以下のような変化が現れます。これらの症状がみられた場合には、すぐに病院で診察を受けるようにしてください。

・赤ちゃんが泣かずに、ぐったりとしている
・気を失った
・大泉門部分が内出血を起こし、大きく腫れ上がっている
・発熱がある

頭をぶつけてしまったあとは経過観察を!

脳への影響はすぐに症状が出ないこともあるために、頭や大泉門部分をぶつけてしまった後は経過観察を怠らないようにしましょう。

ぶつけてから24時間以内に異常がみられない場合は、問題がないといわれています。
そのため、24時間が過ぎるまでは、パパやママが交代で赤ちゃんの様子を観察するようにしましょう。入浴について、ぶつけた当日は避け、ガーゼなどで体を拭くだけに留めるのが安心です。

大泉門の異常にみられる病気

大泉門が閉じる年齢になった女の子

大泉門は、乳児健診のチェック項目に入っています。そのときに、医師からの指摘が何もなければ、特に気にする必要はありません。

大泉門が閉鎖する時期には個人差があるものなので、母子手帳にある成長曲線で、身長・体重・頭囲のバランスが取れているようであれば、ほとんどの場合で大泉門が遅く閉じようと何も問題はありません。

ですが、大泉門が閉じない・閉じる時期が遅い兆候に病気が隠れている場合もあります。どうしても心配なときは、1歳半の乳児健診や病院で相談してみるのもよいでしょう。
もし、健診時に指摘を受けた場合には、すぐに病院へ行き、しっかりと検査を受けるようにしてください。

大泉門が閉じない・閉じるのが遅い

2歳を過ぎても大泉門がはっきりと残っている場合は、以下のような病気の可能性も考えられます。そして、もし異常があった場合、成育の遅れや頭囲が急に大きくなるなどの症状がみられます。

くる病(骨軟化症)

くる病は、骨が曲がりやすい、やわらかくなる、骨折しやすくなる…などの症状がみられる骨の病気です。遺伝的要因や、栄養不足・日光不足によりビタミンDやリンの不足、消化器官の病気などによりカルシウム摂取に弊害が出ることで起こります。

くる病は、近年の日本では発症例が少なくなったものの、未熟児や消化管の病気がある場合は、栄養の蓄えや吸収が悪いため、発症のリスクが高くなります。

クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)

通常、喉仏の下にある甲状腺から、甲状腺ホルモンが分泌されています。甲状腺ホルモンとは、体の代謝を調節し、知能や身体の発達に重要な働きをするホルモンです。

クレチン症とは、この甲状腺ホルモンの分泌が不足して起こる病気です。3,000〜5,000人に1人ほどの割合で発症がみられます。早期発見が重要で、甲状腺ホルモンの内服により治療が行われます。

治療せずに放っておくと、知能や発達の遅れ、低身長などの症状が現れてきます。

大泉門が生まれたときから閉じている・閉じるのが早い

生まれてすぐに大泉門が閉じた赤ちゃん

「頭蓋骨縫合早期癒合症」といって、何らかの理由で頭の骨のすき間が早くくっついてしまう病気があります。これによる弊害として、脳が十分に成長できずに、頭蓋骨の変形や、脳圧亢進症状により脳ヘルニアが起こり、精神の発達や視力への影響、顔面の変形などを引き起こす可能性が高くなります。以下はこれらの症状がみられる代表的な病気です。

狭頭症

脳は発育しますが、頭蓋が大きくならない病気です。
頭蓋骨の切断、組み替え・形成、頭蓋内の容積の拡大、顔面の変形についても、外科手術による治療が行われます。

非常に難易度の高い手術となるため、脳への影響や、角膜の欠損、呼吸困難などのリスクは伴いますが、外科手術での治療は確立されている病気です。

小頭症

脳の発達が遅れたり、停止してしまう病気です。頭部が成長せずに異常に小さいという特徴があります。染色体異常、妊娠中の胎内感染や血液・酸素の供給不足などが原因として考えられます。

残念ながら小頭症を根本から治療する方法はなく、知的発達の遅れについては療育的なケアを、けいれん発作などの症状については、症状に応じた対症療法を行うことになります。

小頭症とはどんな病気?原因やジカ熱との関係、具体的な症状
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アペール症候群

国が難病指定している、遺伝子の異常によって起こる先天性の病気です。日本でみられる発症例は、年間10人前後と珍しい病気でもあります。眼球の突出と、合指症や合趾症といわれる、手と足の指の癒着を合併するのが特徴です。

出生後まもなくから、症状の程度によって、脳神経外科、遺伝子科、整形外科、眼科などさまざまな科で外科手術や治療を受けることになります。

大泉門が膨らんでいる

眠くて兄に寄りかかる弟

大泉門があまりに膨らんで盛り上がっている場合には、脳室内の出血、硬膜下血腫、髄膜炎、脳腫瘍などの脳の病気が考えられます。そして、これらが合併して起こる水頭症の可能性も出てきます。

水頭症

水頭症とは、脳を保護している脳脊髄液が、頭の内側で過剰に留まる病気です。増えすぎた脳脊髄液によって、頭の内圧が上がり脳を圧迫してしまうことで、頭痛・吐き気・食欲不振・体重減少・全身倦怠感・眼の動き方の不自由などが症状として現れます。

乳児では、頭のサイズが大きくなるのが特徴です。

大泉門が凹んでいる

赤ちゃんの体は約80%が水分であるため、体内の浸透圧の変化も大泉門に影響します。

大泉門が少しの凹んだ状態で、赤ちゃんが元気に泣いているようであれば、それはきっとおなかが空いたり、喉が渇いているというサイン。
しかし、大泉門が大きく陥没している場合には、脱水症状や栄養障害の可能性が考えられます。

脱水症状

身体の小さな赤ちゃんは脱水症状を引き起こしやすく、悪化するスピードも早いため十分に注意してあげましょう。

多くの脱水症状には、嘔吐や下痢を伴います。重症化すると、目がくぼんだり、ぐったりするなど、明らかな体調不良の症状がみられます。点滴や入院が必要となることもあるため、すぐに病院へ行くように!

栄養障害

大泉門が大きく凹み、体重の増加があまりみられない場合は、栄養障害が疑われます。

母乳やミルクをあまり飲まない少食の赤ちゃんもいるなど、赤ちゃんの体重の増え方には個人差があるものなので、体重だけで栄養状態の判断はできないにしろ、体重の増え方は健康管理の上で普段から気をつけておきたいところ。

生まれたときから1ヶ月で約1,000gの体重増加が標準といわれています。

とても繊細な大泉門!触れるときはやさしく

大泉門は繊細な部分です。赤ちゃんの成長が気になって、大泉門の大きさを確認したくなるかもしれませんが、指で強く押すなど必要以上に力を加えないようにしましょう。

しかし、絶対に触れてはいけないなどはなく、必要以上に心配しなくても大丈夫です。赤ちゃんをかわいがるとき、沐浴のときには、手のひらでやさしく触れてあげてくださいね。

大泉門が心臓の鼓動で、ピクピクと動く様子が見られるのは、わずかな期間です。そう考えると、とても愛おしく思えてきますね。思い出として、動画に残しておくのもいいかもしれませんね。